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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(あ)1853号 決定 1970年9月29日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人露峰光夫の上告趣意は、単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由にあたらない。なお、刑法四五条後段は、ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判を受けた事実があるということを要件として、その罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合罪としようとするものであって、その確定裁判による刑の言渡に基づく法的効果が存続していることを要件とするものではない。そして、同法二七条に「刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ」とあるのは、刑の言渡に基づく法的効果が将来に向って消滅するという意味であるから、同条によって、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失っても、そのことは、同法四五条後段の併合罪関係の成否とは相関しないものというべきである。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文とおり決定する。

(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小郷)

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